エクステリア工事計画の注意点~階段工事~
こんにちは。1級エクステリアプランナーの井出です。
前回は道路から玄関までを導くアプローチ工事についてお話ししました。
今回はアプローチから続く設計になっていることも多い、階段工事についてお伝えしていきたいと思います。
排水などの関係で、外構部分より少し高い位置にお住まいを建てることも多くあり、その場合に玄関までに数段の階段を設置します。
また、近年の夏の豪雨による水害対策のためにあえてお住まいの位置を高くされる方もいらっしゃいます。
アプローチと同じように、階段も毎日家族が通ったり、来客時にお客様も必ず通る場所。機能面とデザイン面をともに兼ね備えた設計にしたいものです。
階段工事で気を付けるべき点や、適切なサイズや素材について詳しくお伝えしていきたいと思います。
外構階段の適切なサイズ
まずは階段の各部分の呼称である『蹴上(けあげ)』と『踏面(ふみづら)』について説明します。
蹴上(けあげ)とは階段の1段に対する立ち上がりのことを表します。
踏面(ふみづら)はその名のとおり、踏む面となるので足を乗せる部分を指します。
毎日使う住宅のアプローチ階段として一般的に使いやすいと言われる寸法は、蹴上150mm以下、踏面300mm以上となります。
幅については、前回のアプローチでお話させていただいた寸法を参照していただければと思います。
こちらも現地の状況により寸法に多少の前後は発生しますが、上記の寸法を参考に階段計画を考えられることが望ましいでしょう。
一連の階段での蹴上高さは揃える
人は階段を歩く際に、すべて同じ高さであると思って階段を上がります。
これが各段によって高さに違いが生まれると、つまずきの原因となり、安全な階段とは言えません。特に段数の多い階段の場合は、つまずきによる転落事故が発生してしまう可能性もあります。
安全に使用するためには、蹴上の高さを揃えること、これは最優先に考えるポイントとなります。
低すぎる蹴上もつまずきの原因となる
蹴上150mm以下が使いやすい階段とお伝えしましたが、かと言って低すぎることもつまずきの原因となります。
100mm以下となると足を上げるのに中途半端な高さとなって、つまずきやすくなってしまうためと考えられます。
例えば、駐車場とお住まいの高低差が180mmだった場合に、150mm以下にするべきという決まりを踏まえて90mmを2段設けてしまうと、逆につまづきやすくなってしまいます。
この場合はあえて180mmを1段のみ設けたほうがいいこともあります。
使用目的に合わせて寸法や設計を調整する
車いすやベビーカーを使用するご家族がいらっしゃる、または杖を使って歩行する場合はもちろん規定寸法に縛られることなく、業者さんと相談しながら使いやすいサイズを適宜探していきましょう。
敷地内にスロープと階段を併設して設けられるスペースが確保ができれば、階段利用のご家族とスロープ利用のご家族ともに最適なのですが、一般住宅ではなかなかそこまでスペースが確保できないことのほうが多いでしょう。
その場合は階段の途中で広めの踊り場を設けたり、掴みやすい手すりを設置するなど、計画を工夫すればご家族全員が安全に階段を使うことができます。
こちらも業者さんとしっかり打ち合わせをしていろいろとアドバイスをしてもらいましょう。
踏面は滑りにくい素材を使用する
階段はつまづきや転落の危険性を含んでいるため、とにかく安全であることが最重要です。特に雨の日や冬の凍結時期は滑りやすくなることが考えられます。
段数が多くなればなるほど危険を伴いますので、踏面にはノンスリップ加工のタイルや平板など、滑りにくい素材を選ぶようにすることがおすすめです。
素材によっては少し滑りやすいものもありますが、デザインを工夫することによって滑りにくくすることも可能です。業者からの提案段階で、デザインだけでなく機能面についても確認を行い、慎重に商品選びを進めてください。
階段に使用される素材
階段によく使われる一般的な素材をご紹介します。
タイルは滑りにくい加工のものもあり、安価でカラーバリエーションも多いのでたくさんのお住まいで選ばれている素材です。
コンクリート平板は最も安価ですがタイルに比べると少し滑りやすく、カラーバリエーションがあまりありません。そのため、蹴上には違う素材のものを組み合わせてメリハリをつけるといいでしょう。
洗い出しコンクリートは一見滑り止めになっているように見えますが、濡れると少し滑りやすくなります。価格はそれほど高くなく、骨材となる化粧砂利のカラーをお選びいただけます。
隅の砂利がポロポロ取れてこないようなストッパーの役目としても、蹴上にレンガなどを組み合わせるとデザイン性も出ておすすめです。
こちらも踏面は洗い出しコンクリートで、蹴上にはピンコロというブロック状の天然石を使ったデザインです。
天然石は素材の中では高価なほうに入ります。滑り止め加工がしにくいので滑りやすさはあります。ただ、やはり天然の風合いがとても素敵なので、デザイン性には優れています。和洋それぞれに合うものがいろいろ選べます。
天然石には蹴上に異素材のものを使ってもメリハリが出て映えます。コストも少し抑えられますので、「天然石が素敵だけど予算が…」という場合には、一度業者さんに相談してみてください。
何度もお伝えしたように、階段は安全第一です。まずはご家族にとって支障のないサイズ・材質であることを念頭に置いて計画していきましょう。
そして玄関前を大きく占める場所でもありますので、お住まいがより引き立つような素敵なデザインを完成させてくださいね。
次回はお家の顔となる、門柱についてお伝えしていきます。